札幌クロスオーバー 〜眠れない街へ〜

第三十一話  夢を追うマッドサイエンティスト


 ふたたび工学部棟に戻る。担当の准教授の方(三十代くらい?)に引率され、知らない男子高校生たちとともに、 四人で「情報科学研究科棟」に向かう。
 工学部棟はなんとなく古そうな建物で、看板も旧字体であったりしたが、情報科学研究科棟のほうは、いかにも ハイテク! 工学部! といった感じの現代的な建物だった。さすがに、情報の科学を研究しているだけはある。

 中に入って、さらに准教授についていき、研究室の一つに通された。なんか、スライドショー的なものを、スクリーン に投影して見せてくれるらしい。ほんとこの大学スライドショー好きだな……
 あ、スライドショーっていっても、別に何かがスライドするわけじゃないからね。理科の実験で使う、プレパラート のスライドガラスと一緒だよ。カバーガラス割っちゃう子よくいるけど、あれって柄つき針が悪いんじゃないかと思う んだけどどうだろう。どうでもいいけど、プレパラートってドイツ語(Präparat)らしいね。

 LSI。
 Large Scale Integration――大規模集積回路。
 航空輸送されることが多い工業製品として、地理の授業で習う人が大半かもしれない。
 LSIってなに? と訊かれると、ちょっとわからない。なんかちっちゃい精密な回路だということは、まあ名前の漢字 を見ればみんなわかるんだけど……
  Wikipediaによると、「特定の複雑な機能を果たすために、多数の素子を一つにまとめた電子部品」のことである らしい。素子そしというのは、要するに電子部品のことだ。 抵抗器とか、コンデンサとか。素子もとこではない。味の素 マヨネーズ……

 そのLSIの研究とかをこの准教授はされているそうだ。むう、なんという文明人。テクノロジーの申し子!
 研究内容はどういったものかというと、なんかLSIを虫の脳に埋め込んだりしているらしい。こえーよ。 なにそれ、サイボーグ昆虫じゃねーか。なんかSFとかでよく脳にチップ埋め込んでネットワークとつながったり基礎教育 の必要がなくなった人とか出てくるけど、ああいう系統だろうか。おいおいやべーぞそれ。
 とか思ったけど、准教授は別にマッドサイエンティストではないらしい。よかったー。
 准教授は、子供のころから、自動操縦の車を造るのが夢なのだそうだ。
 夢を追い続ける男。か、かっこいい。

 自動操縦の車。できたらどんなものだろうか。免許とかは不必要になるのだろうか? いや、それはないか……飛行機 とかの例もあるし。
 夜間の長距離運転とかは便利になるに違いない。まさにSFの世界。
 ただ、今のところ、解決すべき課題はまだまだあるらしい。そりゃそうだよね。不測のトラブルもいっぱいあるもんね。

 スライドショーに時折出てくる資料はすべて英文であったため、なんだかちんぷんかんぷんだった。
 壁に貼ってある英字新聞?(雑誌?)にはminimoogとか書いてあった(「シンセサイザークロニクル」にもminimoogの 記事があった)ので、さすがに工学部だなあ、と思った。

 ここでも眠気が容赦なく襲い掛かる。遊びすぎか? や、やばい。このなま暖かい空気……!
 しかし、眠りに落ちるか落ちないかのところで、別室に移動。ノンレム睡眠を免れた。

 この研究室には、なんと二千五百万円もするコンピューターがある。轟音を立てて振動するコンピューター。二千五百万 って、ノートパソコン何台分だ……?
 さすが旧帝大ッ! おれたちの知らないコンピューターを平然と使いこなすッ! そこにシビれるあこがれるゥ!!
 かなり古い型のコンピューターもあり、もう扱える人が少なくなってきているらしい。
 さらに、LSI自体も顕微鏡で拡大して見せてくれるそうだ。

 感想。
 虫みたい。
 うん、ほんとに、金色の虫みたいな感じなんだよね。
 あれがいろんなコンピューターを動かしていると思うと、不思議な感じがする。

 研究室見学は二時間の予定ではあったが、早めの一時間半で終了。もとの工学部棟に戻ることになった。

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