札幌クロスオーバー 〜眠れない街へ〜

第ニ十五話  記録頼り旅行記


 女の子とホテルにチェックイン――そういうとなにやら情事のような、秘め事のような、そういったことを想起させる 言い回しになるが、しかしながら、そういったことは一切ない。ごうもない。
 なにせ僕の部屋には筋肉質な男、いや漢がもう一人である。おなごたちは当然別室でガールズトーク (意訳:恋愛とえろの話)だのなんだのすることになるのだろう。われわれ男子はおとなしくボーイズトーク (意訳:猥談)でもすればいいのかとも思うが、そんなことをしてもむなしくなるだけなのでやめておく。

 さて、意気揚々とホテルにチェックインはしたが、特に何をするということもなく、テレビを見たり、昨晩組み立てた シンセサイザーをいじくったりしていた。
 ヒマになったのでロフトに行ったりもしたようだが、正直記憶が曖昧だ。記録では十五時ころにロフトに行ったことに なっているのだが…… まあ、記録があるということは、行ったのだ。そうに違いない。
 この日は八月三日。今これを書いているのは、翌年五月十五日。さぼりすぎた結果がこれだ。

 ともかく、記録によれば、五時半少し前に「線文字K」と合流した、ということになっている。
 線文字K。彼は中学時代僕と塾で同じクラスに所属し、社会が得意な男であった。線文字Kという変名からも それはうかがえる。
 彼にまつわる、こんなエピソードがある。


 ある日、塾の社会の先生が、国際連合について話していたときのことだ。
「で、この国際連合の建物の建っている土地は、ある大富豪、石油王によって寄贈されたものなんだな、じゃあこれが 誰か、わかる人! いないか!」
 ある小柄な男子生徒が手を挙げ、なにやらとんちんかんな答えを自信たっぷりに言ったように記憶している。
 その瞬間だった。
「あーおしい、ロックフェラーだ……」

 彼は呟いただけだった。しかし誰もが驚きを隠せなかった。彼はあまり自己主張の強くないタイプで、ふだん積極的に じゃんじゃん手を挙げて発言、ということはしない。現にその時もそうであった。
 しかし、ロックフェラーが国連本部の土地を寄贈したということを知っている中学生が、いったいどれだけいる だろうか? 僕も社会は得意なつもりだったが、しかしそれは知らなかった。(後に、「古事記の編纂のときに、 言い伝えを暗誦した人物」というので『稗田阿礼ひえだのあれ 』と答えることができたので、いちおう自分では挽回したつもりでいる)

 そんなわけで、彼は今では札幌の進学校に進み、たまに帯広に遊びに来るとき以外は、顔を合わせる機会はない。
 それをこの機会に会おうとしたわけだ。それは覚えている。

 で、昼に山本モナたちと合流したところで、彼と合流したわけだ。 


K
ひさしぶりの再会に吹く線文字K



 しかし、合流するのは、彼だけではなかったのだ。

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