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有明の月
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ピピピピピピピピピ…
「ん…」
八月五日、朝四時。
まだ薄暗い屋根裏部屋の布団の中で、俺は目を覚ました。
前日に仕掛けておいた、『目覚まし二段構え戦法』の一段目で難なく起きることができた。
聞きたくないかもしれないが、『目覚まし二段構え戦法』について説明しよう。
まず、『一段目』。自分の近くに目覚ましを仕掛けておく。まあ、一般的な目覚ましの使い方だ。だが、ここで俺は
考えたのさ(NO・SA!)。「二度寝を防ぐにはどうすりゃいいか」ってな(TE・NA!)。そこで編み出したのが『二段目』
だ。手を動かすだけなら、目を開けることなく、手探りで目覚ましを止められる。だが、ここで二つ目の目覚ましを、
寝床から遠くに設置しておく。立ち上がって歩けば、確実に目が覚める、って寸法だ。
こんな誰でも思いつきそうなことを長々と熱弁していたら、少しむなしくなってきたんだが、どうすりゃ
いいだろうか?
あと、この方法の成功率には個人差がある。要するに、二つの目覚ましの音をバックにむにゃむにゃと惰眠を貪って
しまう可能性もなしとは言えないって訳だ。だから失敗してもクレームはつけないでほしい。
まあ、今日のところは起きられたからよしとしよう。
階下に下り、鞄に持ち物を入れて着替えも済ませ、さあ、出発だ。
玄関先に停めてあった黒いステンレス製の自転車に跨り、眼鏡を取りにいったん戻ってから、気を取り直しDKを
目指す。
何度も書いている気がするが、DKというのは、ある先輩が名づけた「団地の公園」の略称だ。バナナ百本で残機が増える
どこかのネクタイをした霊長類とは一切関係がない。
薄く靄のかかった涼しい早朝の町には、車はおろか、人っ子ひとり歩いていない。小鳥すら鳴いていない。
風を切りながら自転車を飛ばして、約1キロ離れたDKに到着した。すでにパンテーン、小人、阪神、ケミカル先輩、
1+1=7先輩、μg先輩、180°先輩が来ていた。俺は八着か。これまでは一着か二着が多かったんだが、やっぱり途中で
戻ったからだろうか。
ふぅ、と息を吐き出した俺に、小人がニヤニヤしながら言う。こいつはいつもやに下がっているというか、
ニヤニヤしている。持病だろうか。
「遅せーぞ」
「途中眼鏡取りに戻ったんだよ、それに遅刻じゃないだろ。今何分ですか?」先輩たちの方を向いて言った。
「四時…二十七分」携帯を確認した先輩が言った。
「ほら」
「あ、月が出てる」
先輩の言葉に、俺は空を仰いだ。北西空高くに、青白い下弦の月が、存在感を主張することなくひっそりと
浮かんでいた。
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有明の月というものを、はじめて見たように思う。
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アスレチックの奥にある築山に登って、朝の空を眺めた。
西日本で猛威を振るった台風5号が昨日ようやく北海道上空を過ぎ去り、心配されていた雨も降らず、
ひとまず安心した。ゆっくりと昇ってきた朝日が東の
地平線近くを橙色に染め、そこからだんだんと青系の、いわゆる空色にグラデーションしていくさまは、なかなか
詩情をそそる(詩は苦手だが)というか、趣を感じた。
これは一枚撮りたいと思い、築山の上で旧式のデジカメを構えたわけだが、
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団地邪魔。
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家を出た時に撮っておいたほうがよかったなと思いつつ、築山を下りてしばらく雑談していると、ヒルハが来て、
もうしばらくしてから沼が来た。他にも一年生や二年生を呼んでおいたのだが、行けなくなったらしい。やはりまだ
早かったか。沼は別として。去年の参加メンバーのうちの二人も、それぞれ塾主催の高校見学会やらの用事で
行けなくなったと言われた。受験生は大変だな。あれ?受験…おいしいの?
メンバーが揃ったところで、出発といきたいところだが、その前に近くのコンビニで腹ごしらえをすることにした。
腹が減っては戦ができぬと昔から言うから。とりあえず古人に盲従。
おのおの飲み物や食べ物を買い(俺はおにぎりを二つ買った)、今度こそ出発だ。
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さあ、母なる海へ。
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